前立腺肥大症とは
前立腺肥大症とは、男性のみにある器官である前立腺が肥大化して周囲の膀胱や尿道を圧迫し、頻尿・尿の勢いの低下など様々な排尿障害を引き起こす病気です。
主な原因は加齢で、中高年になって排尿障害が起きた場合には、前立腺肥大症の可能性を考えます。
前立腺肥大症の症状
- 頻尿:頻繁に尿意をもよおす
- 排尿困難:排尿が難しくなる
- 残尿感:排尿後も尿が残っている感覚がある
- 夜間頻尿:夜間に頻繁に尿意をもよおす
- 尿意切迫感:尿意を我慢することができずにトイレに駆け込む
- 尿勢低下:排尿の勢いが弱い
- 尿線途絶:途切れ途切れに尿が出る
など
前立腺肥大症の原因
前立腺肥大症の原因は、加齢、男性ホルモンの変化、高血圧、肥満、メタボリックシンドローム、食事、遺伝的因子、局所的炎症などが関与していると考えられています。
一般的に30歳代になると前立腺に肥大化がおこり始め、この肥大化は50歳で30%、60歳で60%、70歳で80%、80歳では90%の人に見られますが、すべての方が治療を必要とする症状を伴うわけではありません。治療を要するような症状を伴う方の頻度は、その4分の1程度と言われています。
前立腺肥大症の検査と診断
質問票
国際前立腺症状スコア(IPSS)などを用いてチェックを行います。
尿検査
尿検査は、排尿機能に障害を与える疾患を除外するためなどに行われます。
超音波検査
超音波検査では、前立腺のサイズを測定して肥大の程度などを確認します。また、排尿直後の膀胱の状態を確認し、尿がどの程度膀胱に残っているかを測定します。
尿流量検査(ウロフロメトリー)
排尿の勢い、量、時間など、排尿の具合を客観的に調べる検査です。
血液検査
血液検査では、前立腺がんの腫瘍マーカーであるPSA(前立腺特異抗原)の血中濃度を測定します。この検査は比較的簡単に行える上、前立腺がんの早期発見にも有効なため、スクリーニング検査として人間ドックなどでも採用されています。
直腸診などの身体所見確認
直腸診は、直腸に隣接する前立腺の形状やサイズ、硬さ、痛みの有無などを確認する検査です。検査では医師が肛門に直接指を入れて触診します。
前立腺肥大症の治療
薬物療法
α1アドレナリン受容体遮断薬(α1遮断薬)
前立腺や膀胱の平滑筋緊張に関係するα1アドレナリン 受容体を阻害して排尿障害を軽減させる効果があります。治療開始から比較的短期間で効果が見られます。
5α還元酵素阻害薬
前立腺肥大化の原因として考えられている男性ホルモンの産生を抑制することで、前立腺そのものを小さくすることにより排尿状態を改善させる効果があります。
5α還元酵素阻害薬を用いた治療は、効果が数か月かけてゆっくり発現すると言われおり、中長期的に服用を継続する必要があります。
PDE(ホスホジエステラーゼ)
5阻害薬
前立腺や尿道の筋肉を弛緩させて尿道への圧迫を緩和する効果があります。治療開始から比較的短期間で効果が見られます。
漢方薬・植物エキス製剤
漢方薬や植物エキス製剤の中には、排尿障害を改善する効果が期待できるものもあります。
手術
薬物療法の他には、前立腺の状態や合併症の有無などを考慮して手術治療を検討することもあります。近年、患者様に対して負担の少ない内視鏡手術も普及しつつあります。
なお、当院では手術が必要と判断された場合には、連携する高次医療機関を紹介いたします。
前立腺肥大症の方が
日常で気をつけること
前立腺肥大症は、発症するとQOL(生活の質)を著しく低下させる恐れがある病気です。そして、前立腺肥大症治療の基本的な目的は、排尿障害の和らげることで QOL 障害を改善させることにあります。
前立腺肥大症と診断されている方は日常生活の中で以下のようなことにお気をつけください。
- 便秘症状がある場合には改善させる
- 下半身を冷やさないよう気を配る
- アルコールやカフェイン、
辛いものなどの刺激物の摂りすぎに注意する - 長時間座ることを避ける
- 適度な運動習慣を身につける
- 適度な水分摂取を心がけ、過剰な摂取は控える